講義概要
社会調査の目的は、社会事象について現地調査を行い(積極的に数値を利用して正しく測定する)、データを入力し、調査結果から一般的な規則性を見出し、必要に応じて取るべき行動を定めようとすることである。現在、社会福祉など専門分野では、人々のニーズの把握や解決策を量的調査や質的調査に基づいて提案するなど科学的エビデンスが求められている。本講義を受講することにより、社会調査の重要性と、世の中に氾濫する社会調査の真実や問題点を把握することが可能となる。
本講義では、次のことを学習する。第1に、社会福祉領域における社会調査の意義と目的、統計法の概要、社会調査における倫理や個人情報保護、社会調査の基本である質的調査法と量的調査法について学ぶ。第2に、社会調査を実施するに当たり守らなければならない個人情報の保護、得られたデータから個人情報の扱いについて理解を深める。第3に、人々のニーズや問題を発見し、それらの原因や解決策を探るために仮説を設定し、それに基づき質問項目を作成する。現地調査(面接調査)の実施によるデータの収集。量的調査と質的調査の調査の方法を学習する。その際には、社会調査が個人のプライバシーに関わるものであることを念頭におき、個人情報の保護、人権に配慮する。第4に、量的調査や質的調査のデータに基づき、現状と関連要因を分析し、発表レジュメを作成し、発表するなど、エビデンスに基づいた社会調査の必要性を理解する。
学習目標
1.社会調査とは何か、社会調査が必要な理由(社会調査の意義と目的)について理解を深める。
2.社会調査の種類、すなわち事例調査と量的調査の意義について理解し、それぞれ長所と短所を理解する。
3.社会調査における倫理や個人情報保護が必要な理由を把握する。
4.量的調査と質的調査の母集団の標本抽出法、回収率が重要である理由について学習する。
5.グループごとに仮設を設定し、質問項目を作成し、現地調査を実施するなど調査の方法を身に付ける。
6.分析方法(仮説の検証を含む)、分析結果に基づきレジュメの作成、発表、議論の仕方などを実践する。
7.社会福祉士国家試験受験に必要な基礎知識について説明できるようになる(受験予定学生の場合)。
アサイメント(宿題)及びレポート課題
各回の授業のスタイルに合わせて、事前学習ならびに事後学習を課す。なお期末試験は実施しない。
※全回共通:(事前学習)授業に関するアンケートへの回答(10分程度)
受講者の関心や前提知識等について授業の進度や教材を調整するため、定められた期限までに指定のURLからアンケートに回答すること。
1.講義回(第1・2・3・14・15回の5回)
・(事前学習)授業に向けての教科書の音読・精読、内容の理解(110分程度)
各回の授業内容に該当する章・節を音読・精読し、内容を理解しておくこと。これと授業内容を元に各回で理解度確認テストを実施し、その評点を「小テストの評価基準 40%」に組み入れる。
・(事後学習)レポートの提出(90分程度)
授業中に行うワーク&ディスカッションをふまえて、各回の授業後に定められた期限までにレポートを提出すること。その評点を「レポート・課題提出と発表 30%」の評価の一部に組み入れる。
・(事後学習)共有レポートの精読(30分程度)
次回授業までに共有する受講者が提出したレポートを全て精読し、授業内容について理解を深めること。
2.演習回(第4・5・6・7・8・10・11・12回の8回)
・(事前学習)授業に向けての教科書の音読・精読、内容の理解(110分程度)
各回の授業内容に該当する章・節を音読・精読し、内容を理解しておくこと。これと授業内容を元に各回で理解度確認テストを実施し、その評点を「小テストの評価基準 40%」に組み入れる。
・(事後学習)演習課題の仕上げ・提出(120分程度)
授業中に行う演習をふまえて、各回の授業後に定められた期限までに演習課題を仕上げ、提出すること。その評点を「レポート・課題提出と発表 30%」の評価の一部に組み入れる。
3.プレゼンテーション回(第9・13回の2回)
・(事前学習)プレゼンテーションの準備(110分程度)
プレゼンテーションに備え、グループごとに発表資料の用意と発表のリハーサルを行うなど、万全の準備をしておくこと。
・(事後学習)相互評価表の記入と提出(120分程度)
プレゼンテーションの相互評価表を記入し、指定の方法で提出すること。
教科書・参考書・教材
【教科書】
潮谷有二ほか、『社会調査の基礎』ミネルヴァ書房
*授業中に適宣資料を配布する。
【参考書】
社会福祉士養成講座編集委員会『社会調査の基礎』中央法規。
東京福祉大学編『新・社会福祉要説』ミネルヴァ書房。
成績評価の規準と評定の方法
○成績評価の規準
1.社会調査とは何か、社会調査が必要な理由(社会調査の意義と目的)について理解を深めることができたか。
2.社会調査の種類、すなわち事例調査と量的調査の意義について理解し、それぞれ長所と短所を理解することができたか。
3.社会調査における倫理や個人情報保護が必要な理由を把握することができたか。
4.量的調査と質的調査の母集団の標本抽出法、回収率が重要である理由について学習することができたか。
5.グループごとに仮設を設定し、質問項目を作成し、現地調査を実施するなど調査の方法を身に付けることができたか。
6.分析方法(仮説の検証を含む)、分析結果に基づきレジュメの作成、発表、議論の仕方などを実践することができたか。
○評定の方法
小テストの評価基準 40%
授業の態度や内容の把握など 30%
レポート・課題提出と発表 30%
受講生へのメッセージ
①「9.アサイメント(宿題)及びレポート課題」で述べたように、本授業では 120 分程度の事前学習ならびに 120 分程度の事後学習(計 240 分)を前提とし、講義内では理解度確認テストやワーク&ディスカッション、演習を多く取り入れたアクティブ・ラーニングの授業方法を積極的に取り入れている。したがって受講する学生は授業時間(90 分)とは別に事前学習・事後学習の時間(計 240 分)を確保し、授業中に加えて授業前・後も積極的に学習する姿勢を求める。
②「11.成績評価 の規準と評定の方法 」で述べたように、本授業の評定においては事前学習ならびに授業を通じて内容を理解しているかを問う「小テストの評価基準」を最も高く評価する(40%)。ただし、単に理解しているかどうかに止まらず、授業への積極的な参加を「授業の態度や内容の把握など」(30%)として、授業の成果物としてのレポートや演習課題の提出状況や、発表の質を「レポート・課題提出と発表」(30%)として評価することを含めて、日々の授業への継続的な取り組みを総合的に評価する。したがって正当な理由なく授業へ遅刻・早退・欠席することは原則として認めず、学期中は授業への出席を第一に優先することを求める。
③新型コロナウイルス感染症拡大予防に伴い、対面・遠隔の併用授業を行う可能性がある。遠隔で参加した場合、学生同士で交流することが難しくなり、学習のモチベーションが下がる傾向がある。本授業では、受講者が教員と受講者同士でのやりとりを活発化させる様々な工夫を行う予定である。未曽有の事態ではあるが、受講者の皆さんが「8、学習目標」に定めた 7 つの事項が達成できるよう全力を尽くして授業を行う。
授業展開及び授業内容
回 | 授業内容 |
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第1回 | オリエンテーション&社会福祉調査を学ぶ意義、その歴史・統計法 |
第2回 | 社会福祉調査の倫理と個人情報保護 |
第3回 | 社会福祉調査のデザイン |
第4回 | 量的調査①-量的調査の標本抽出 誰に尋ねるのか |
第5回 | 量的調査②-尺度と質問の作成方法 どのように測るのか |
第6回 | 量的調査③-配布・回収・データクリーニング どのように集め、整理するのか |
第7回 | 量的調査④-基本統計量 どのようにまとめるのか |
第8回 | 量的調査⑤-クロス集計と結果の整理 何がわかるのか |
第9回 | 量的調査⑥-質問紙調査結果プレゼンテーション |
第10回 | 質的調査①-質的調査の種類と特徴 |
第11回 | 質的調査②-インタビューの実施と文字起こし |
第12回 | 質的調査③-分析の実際 |
第13回 | 質的調査④ーインタビュー調査結果プレゼンテーション |
第14回 | ソーシャルワークにおける評価① |
第15回 | ソーシャルワークにおける評価②&授業のまとめ |