副題

大学における生涯学習の課題を学び、その活性方策を考えよう

授業概要

本授業は2つの視座から位置づけることができます。第一に、生涯教育学専修1年次における「生涯学習」についての「基礎演習」という必修科目であるということです。「生涯学習」とは、「人々が自発的意思に基づいて、『自己の充実』、『生活の向上』、『職業能力の向上』のために、自ら学ぶ内容を選び取り、充実した人生を送ることを目指して生涯にわたって行う学習」のことを指します(香川・鈴木・永井編2016)。生涯教育学専修においては、これら生涯学習を学ぶ様々な授業が用意されています。しかし単に授業を聞いているだけでは、十分に理解することは難しいでしょう。そこで大学1年次の「基礎演習」においては、以降の大学における学修に主体的に参加できるように、学術的な文章の作成や論理的な思考力、学内の図書館等の学習支援施設の利活用力といったアカデミックスキルの習得に取り組むことが必要とされています。 第二に、社会教育士養成課程における「社会教育特講」に該当する授業であるということです。「社会教育主事養成の見直しに関する基本的な考え方について」によると、同科目は、「社会教育主事としての幅広い視野、社会的関心を持たせるとともに、専門的内容についての理解を図る」ことが目的とされており、多岐に渡る現代的課題を扱うことが求められています。但し、「『一人の社会教育主事があらゆる分野で専門性を発揮することは実際上困難となりつつある』状況にあっては、社会教育主事が具体の地域課題を踏まえ,身近な題材等を活用しながら実践的に学ぶ」ことが推奨されています。 そこで本授業ではこれらの視座を統合し、学生諸君にとって「具体の地域課題」に該当する「大学」における生涯学習上の課題を学び、活性方策を考えていただきます。大学には、図書館を始めとしたさまざまな生涯学習を支える施設があります。学生諸君は①グループに分かれ、各施設が大学における生涯学習を支える上で果たす役割を調べ、理解します。②その上で、各施設に勤務する職員に対する聞き取り調査を通じて、各施設における生涯学習上の課題を学び、発表していただきます。③以上を踏まえ、それらの課題に対して採りうる学習プログラムを考案し、受講生ならびに各施設職員に向けてプレゼンテーションしていただきます。これらを通じて、大学における全ての学びに役立つ汎用的なアカデミックスキルを身に付けることを目指します。また自身の学び場でもある大学における生涯学習の課題を理解し、その活性方策を考えることで、学生諸君が未来において向き合うそれぞれの生涯学習の課題に転移しうる基礎力の涵養を目指します。

授業の到達目標

 以上の学習を通じて、履修者には次の2つの目標を達成することが求められます。
①学術的な文章の作成や論理的な思考、学内の図書館等の施設の利活用といったアカデミックスキルを習得する。
②大学における生涯学習の課題に関して研究するとともに、大学内の施設が抱える生涯学習上の課題を題材として、学習プログラムの立案力を鍛える。

事前・事後学習の内容

本授業は個人ワーク、グループワーク、聞き取り調査、プレゼンテーションなどを行う演習の授業であり、アウトプットが中心となります。したがってインプットとして、各回の前週に指示する事前学習(2時間程度、内容は都度指示)に取り組むことが求められます。また全15回の授業はスピーディーに進むため、各回の理解を確かなものにするためにも、自身の学習を振り返るレビューシートを提出していただきます。なお、提出されたレビューシートは他の学生にも共有されます。他の履修者のレビューシートの精読を通じて、相互教育の機会とします。(執筆・精読を合わせて2時間程度。)

授業計画

授業内容
第1回 オリエンテーション授業の概要を説明します。また、生涯教育学専修で何をどのように学んでいきたいのかについて、受講生同士で意見交換を行います。
第2回 早稲田大学における生涯学習の場を理解しよう早稲田大学内における生涯学習の場として、①図書館、②博物館・歴史館・文学館、③エクステンションセンターの3つについて、生涯学習施設一般との共通点・相違点を踏まえながら基礎的な内容を講義します。その上で、自身がどの場について研究したいのかを考えていただきます。(授業後にアンケートを実施)
第3回 問いの立て方と資料収集の方法を身に付けようグループに分かれたうえで、問いの立て方ならびに資料収集の方法を身に付けます。具体的には、①図書館や電子データベースの使い方、②得られた情報・先行研究のまとめ方について、演習を通じて理解を深めていきます。
第4回 聞き取り調査の方法を身に付けようグループに分かれたうえで、聞き取り調査(半構造化インタビュー)の方法を身に付けます。具体的には、①聞き取り調査の流れ、②質問項目の作成方法、③アポイントメントと事前準備、④深掘り質問のコツについて、演習を通じて理解を深めていきます。
第5回 聞き取り調査の予定を発表しようグループごとに実施予定の聞き取り調査の概要を発表していただきます。お互いに疑問点や改善点を洗い出すことを通じて、聞き取り調査の準備を万端なものとします。
第6回 聞き取り調査の実施グループごとに各施設の職員にアポイントメントを取り、聞き取り調査を実施します。なお授業時間内に実施が難しい場合は、別日時にて実施していただきます。
第7回 聞き取り調査をまとめようグループごとに行った聞き取り調査について、まとめ方を学習します。具体的には、①文字起こしの方法、②発表へのまとめ方について講義します。その上で、グループごとにまとめ作業に取り組んでいただきます。
第8回 プレゼンテーションの方法を学習しようグループごとに行った聞き取り調査について、効果的なプレゼンテーションの方法を学習します。具体的には、①効果的な導入、②結論を先に述べる、③データや具体例の効果的な提示、④論理的整合性、⑤パワーポイント作成のコツなどについて、演習を通じて理解を深めていきます。
第9回 早稲田大学における生涯学習上の課題を発表しようグループごとに、資料収集を踏まえて実施した聞き取り調査から得られた生涯学習上の課題について発表していただきます。お互いに疑問点や改善点を洗い出すことを通じて、課題の理解を確かなものとします。
第10回 学習プログラムについて理解しよう学習プログラムの定義を説明した上で、様々な具体例を講義します。また事例学習として、学習プログラムの評価について講義するとともに、特定の学習プログラムの改善(リデザイン)を考えていただきます。
第11回 学習プログラムを作成しよう①グループごとに、各施設の生涯学習上の課題に沿った学習プログラムを考案していただきます。また学習プログラムの一部について、実際に実演していただくための準備も進めていただきます。
第12回 学習プログラムを作成しよう②前回同様、学習プログラムの考案ならびに一部実演のための準備を進めていただきます。全体の進捗に応じて、お互いのグループの学習プログラムを体験することで、学生の視点からフィードバックを行い合う時間を設けます。
第13回 学習プログラムを発表しよう①聞き取り調査に協力いただいた職員の方を始めとしたオープン形式で、学習プログラムの発表会を行います。発表会は、各生涯学習施設の紹介ならびに課題の提示、学習プログラムの概要、その一部の実演とします。質問への応答やフィードバックを通じて、学習プログラムの企画力をさらに高めていただきます。
第14回 学習プログラムを発表しよう②+本授業の振り返り授業の前半では、前回同様、学習プログラムの発表会を行います。授業の後半では、14回の学習を振り返り、自分が何を学んだのかを振り返り、受講生同士で意見交換を行います。

教科書

特定の教科所は使用しません。授業のレジュメは前日までにMoodleにアップロードしますので、必ず通読して授業に臨んでください。

参考文献

香川正弘・鈴木眞理・永井健夫編(2016)『よくわかる生涯学習 改訂版』ミネルヴァ書房。
その他、授業中に適宜紹介します。

成績評価方法

平常点評価(45%):授業後に提出するレビューシートで評価します。(3点満点×15回)
発表(55%):中間発表(25点)、学習プログラムの発表(30点)で評価します。評価の詳細は授業中に指示します。
※期末考査は実施しません。

備考・関連URL

・授業内容ならびに進捗は、学生諸君の理解に応じて適宜変更を加えます。

・授業の欠席は、単位習得に関わるほか、他のグループ内の履修者に影響を及ぼします。授業期間中は授業の出席を最優先とし、無断での欠席は控えてください