講義概要

 本科目は、国が定める社会福祉士および精神保健福祉士の養成カリキュラムにおける「社会学と社会システム」(旧カリキュラムでは「社会理論と社会システム」)に対応するものである。対人援助職に就く者には、被援助者とそのニーズを、社会的な関係性の中で把握することが求められる。人間は社会的な関係の中で生まれ育つものであるし、援助を必要とするような問題(ニーズ)も社会的関係の中から生ずるものだからである。こうしたことから、援助職に就こうとする者には、人間を取り巻く「社会」のなりたちや変化について観察・分析する学問である社会学の学習が必要となるのである。
 この講義では、社会学の基本的な考えかたと対象について幅広く取り上げる。また、国家試験などで求められる社会学の基本的な用語や知識についても学習する。

学習目標

学生には下記の目標を達成することが期待される。
1.現代社会についての基礎知識を身につけて、物事をその社会的背景から考えられるようになる。
2.人間と社会の関係について学び、人間を社会的関係の中で捉えられるようになる。
3.社会問題について深く考察できるようになる。
4.人々の生活について多角的に考えられるようになる。
5.さまざまな社会学の理論について学び、社会学的な考え方ができるようになる。

アサインメント・レポート

各回の授業ごとに、事前学習ならびに事後学習を課す。なお期末試験は実施しない。
①(事前学習)授業に関するアンケートへの回答(10分程度)
受講者の関心や前提知識等について授業の進度や教材を調整するため、定められた期限までに指定のURLからアンケートに回答すること。

②(事前学習)授業に向けての教科書の音読・精読、内容の理解(110分程度)
各回の授業内容に該当する章・節を音読・精読し、内容を理解しておくこと。これと授業内容を元に各回で
理解度確認テストを実施し、その評点を「授業内容の理解度の評価 30%」に組み入れる。

③(事後学習)レポートの提出(90分程度)
授業中に行うワーク&ディスカッションをふまえて、各回の授業後に定められた期限までにレポートを提出
すること。その評点を「レポート等の提出物 50%」の評価に組み入れる。

④(事後学習)共有レポートの精読(30分程度)
次回授業までに共有する受講者が提出したレポートを全て精読し、授業内容について理解を深めること。

教科書・参考書・教材

【教科書】一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟編『最新 社会福祉士養成講座 精神保健福祉士養成講座3 社会学と社会システム』中央法規出版、2021

成績評価の規準と評定の方法

○成績評価の規準
・社会学の理論や人間と社会の関係を理解し、説明できるようになったか。
・現代社会や社会問題についての理解をもとに、自分の考えを述べることができるか。
○評定の方法
授業への参加姿勢等 20%
レポート等の提出物 50%
授業内容の理解度の評価 30%

受講生へのメッセージ

①「9.アサイメント(宿題)及びレポート課題」で述べたように、本授業では 120 分程度の事前学習ならびに 120 分程度の事後学習(計 240 分)を前提とし、講義内では理解度確認テストやワーク&ディスカッションを多く取り入れたアクティブ・ラーニングの授業方法を積極的に取り入れている。したがって受講する学生は授業時間(90 分)とは別に事前学習・事後学習の時間(計 240 分)を確保し、授業中に加えて授業前・後も積極的に学習する姿勢を求める。


②「11.成績評価 の規準と評定の方法 」で述べたように、本授業の評定においては授業を通じた学習成果である「レポート等の提出物」を最も高く評価する(50%)。また、そのレポートの執筆に資するための理解度確認テストの評点に基づく「授業内容の理解度の評価(30%)」や、授業中に実施するワーク&ディスカッションの評点に基づく「授業への参加姿勢等(20%)」も含めて、日々の授業への継続的な取り組みを総合的に評価する。したがって正当な理由なく授業へ遅刻・早退・欠席することは原則として認めず、学期中は授業への出席を第一に優先することを求める。

③新型コロナウイルス感染症拡大予防に伴い、対面・遠隔の併用授業を行う可能性がある。遠隔で参加した場合、授業前後に教員に質問したり学生同士で交流することが難しくなり、学習のモチベーションが下がると言われている。そこで本授業ではそれを防ぐために、教員や受講者同士でのやりとりを活発化させる様々な工夫を行う予定である。未曽有の事態ではあるが、受講者の皆さんが8.学習目標に定めた 5 つの事項が達成できるよう全力を尽くして授業を行う。

授業展開及び授業内容

授業内容Key words
第1回オリエンテーション-どうして社会学を学ぶ必要があるの?社会学とは何か
第2回社会学の歴史-これから学習する社会学の見取り図を描こう社会学の歴史
第3回社会システム-社会の日常的な営みの成り立ちを探ろう社会システム、社会システムの構造と機能、社会階層システム
第4回集団と組織-集うことの功罪を考えよう集団と組織の違い、官僚制、全制的施設、非営利組織
第5回人口-人口変化のメカニズムを説明しよう人口転換、高齢化、少子化、人の移動
第6回社会変動とグローバリゼーション-急速に変化する社会を理解しよう産業化、大衆消費社会、グローバリゼーション
第7回地域-コミュニティの変化に向き合おうアソシエーション、限界集落、ソーシャルキャピタル
第8回環境と災害-エコロジカルな視点を身につけよう公害、災害、地域復興
第9回社会的格差と社会政策-格差に対するアプローチを学ぼう格差社会、福祉レジ―ム、新しい公共
第10回差別と偏見-社会の多様性への感度を高めようラベリング理論、合理的配慮、レイシズム
第11回家族とジェンダー-自分にとっての当たり前を問い直そう近代家族、フェミニズム、現代家族
第12回健康と労働-働き続ける大変さを慮ろう自殺、依存症、労働市場、雇用環境
第13回世代-個人化する人生を振り返ろうライフサイクル、ライフコース、社会的孤立
第14回自己と他者・社会化・相互行為-かかわりによる変化を見つめよう社会規範、創発性、しつけ、予期的社会化、構築主義、公共圏
第15回本講義のまとめー社会学の知見を自らの人生や仕事に生かそう