副題

スクールソーシャルワークの理論と実践についての理解を深めよう

授業概要

 本授業は、教育職員免許法施行規則に定める科目「教育の基礎的理解に関する科目」のうち、「教育に関する社会的、制度的又は経営的事項(学校と地域との連携及び学校安全への対応を含む)」に該当する選択科目である。教職課程履修者は、本科目とは別に「教育制度総論」を履修するため、本科目はとりわけ「社会的側面」ならびに「学校と地域との連携」及び「学校安全」について、「スクールソーシャルワークの理論と実践」というひとつのテーマについての理解を通じて深めることを目指す。

 スクールソーシャルワークを実践するスクールソーシャルワーカーは、学校において福祉的な支援に従事する専門職である。スクールソーシャルワーカーは、不登校やいじめといった教育問題、貧困や虐待といった福祉的問題、さらには「チームとしての学校」政策下における教員の多忙化の問題といった多様な期待がかけられながら、2008年度より全国で実施されて以降その配置が拡充されている。しがたって教職に就く者は現場において協働することが想定される。子どもの福祉的な課題に向き合う上では、スクールソーシャルワークとはなにか、その理論と実践の背景にある「福祉的な見方・考え方」について学習しておくことが有益に働くと考えられる。本科目はこうした問題意識に根差し、授業を構成する。

 なお「福祉的な見方・考え方」は、学校以外の公共的な仕事に就く場合に役に立つことはもちろん、将来地域の一住民として生きていくうえでも意義を発揮するものである。本科目履修者の中には、教職課程を履修するものの、卒業後に教職に就くことを予定していない受講生も一定数いることが想定されるが、本授業の学びはこうした広義の教育者育成にも資するものである。全7回(1単位)という比較的短期間の授業でもあるため、自身の視野を広げるために気兼ねなく活用してほしい。

授業の到達目標

①スクールソーシャルワークの理論と実践についての理解を深める。
②スクールソーシャルワークについての理解を生かし、社会における教育の位置づけや、地域連携・学校安全について考えることができる。

事前・事後学習の内容

・事前学習として、初回にリーディングリストを配布する。各授業までに、そのリーディングリストを読んでおくこと。(各回120分程度)
・事後学習として、各授業後にレビューシートを記入してもらう。授業で学んだことを自分の言葉で言語化することで、将来教職に就いたときに(あるいはその他の場面で)学んだことを思い出せるようにする。(各回120分程度)

※この科目は当該授業内容に関する実務の経験を有する教員等がその実務経験を活かして講義等を行う科目です。

授業計画

第1回 オリエンテーション 「福祉」の意味を問い直す
授業の進め方について説明する。特に自分が知りたいと考える「問い」を考え、発表してもらう。

第2回 スクールソーシャルワーカー(SSW)とは何者か?
SSWの基本的な事項(職務内容、配置形態、勤務日数、保有資格等)について理解する。
合わせて、ソーシャルワークの支援の代表的なモデルについても学ぶ。

第3回 福祉的課題とSSW
貧困、虐待ケースにおけるSSWの動き方を学ぶ。
特に地域の関係機関とのネットワーキングの機能に焦点化する。

第4回 教育問題とSSW
不登校、いじめケースにおけるSSWの動き方を学ぶ。
特に学校を児童生徒にとって安全な場にしていくための環境調整機能に焦点化する。

第5回 発達障害とSSW
特に多忙な学校現場にSSWが参加していくうえで対峙する学校文化・教員文化に焦点化する。

第6回 ゲスト・スピーカーによる講義
現職のスクールソーシャルワーカーに来ていただき、仕事の実際を話していただく。
学生からも質問を準備し、質疑応答を行う。

第7回 まとめ
スクールソーシャルワーカーや教育行政が抱える課題についての理解を深める。
履修者それぞれが授業開始時に考えた「問い」に対して、どのように答えを出したかについて発表する。

教科書

特に指定しない。毎回レジュメを配布する。

参考文献

教職を目指す受講生に対しては、
・朝倉隆司監修・竹鼻ゆかり・馬場幸子編著(2019)『教師のためのスクールソーシャルワーカー入門 連携・協働のために』大修館書店。
がお勧めです。

教職を目指す・目指さないに関わらず、スクールソーシャルワーク全般について学びたい場合は、
・山野則子・野田正人・半羽利美佳 編著(2016)『よくわかるスクールソーシャルワーク第2版』ミネルヴァ書房。
がお勧めです。

その他、スクールソーシャルワークに関わる書籍は、下記の個人WEBサイトより公開しています。
自分で設定した「問い」を深める上でも活用してください。
http://takahirofujimoto.jp/2022/04/15/sswbook/

成績評価方法

レポート: 80% 60%:第1~6回で提出するレビューシート(1回あたり0~10点)の提出内容をもとに評価する。/20%:第7回に提出するレビューシート(20点満点)の提出内容をもとに評価する。
平常点評価: 20% 第1~7回の授業への参加態度(1回あたり0~3点)を評価する。

備考・関連URL

・日本スクールソーシャルワーク協会:
スクールソーシャルワークに関する研修や専門講座を開催しています。特に東京近郊での開催が多いため、関心がある人は参加してみてください。
WEBサイト: https://sswaj.org/

・日本学校ソーシャルワーク学会:機関誌『学校ソーシャルワーク研究』を発行する、日本におけるスクールソーシャルワークの専門学会です。『学校ソーシャルワーク研究』の目次等もWEBサイト内で閲覧できます。発刊後3年を超えた論文はJ-STAGEで読むことができます。
学会WEBサイト: https://www.jssssw.jp/
J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jssssw/-char/ja